犬が手を舐める理由は場面で変わる|飼い主の手・自分の前足の見分け方と受診の目安

犬が手を舐めるのは、多くの場合「あいさつ」や「かまってほしい」という合図です。ただし、同じ舐める行動でも、いつ・どんな様子で舐めるかによって意味は変わります。

また「手を舐める」には、飼い主の手を舐める場合と、犬が自分の前足を舐める場合の2通りがあります。この記事では両方を取り上げ、場面ごとの読み解き方と、動物病院に相談したい目安をまとめました。

先に確認したい、様子見をしないほうがいいケース

舐める行動そのものより、その前後の様子に注意が必要なことがあります。次のような場合は、気持ちの問題と決めつけず、早めに動物病院へ連絡してください。

  • ネギ類・キシリトール入りのガムやお菓子・ブドウやレーズン・チョコレートを触った手を舐めた、または食べたかもしれない
  • 人の塗り薬、ハンドクリーム、日焼け止めなどをたくさん舐めたあと、吐く・下痢をする・元気がない
  • ぐったりしている、ふるえている、けいれんしている、呼吸が苦しそう
  • 自分の前足を舐め続け、毛が抜けて赤くなっている、皮膚が硬く黒ずんでいる、血がにじんでいる
  • 前足を舐めながら、その足をかばって歩く、触られるのを嫌がる

ネギ類・キシリトール・ブドウ類は、少量でも中毒を起こすおそれがあると動物病院が注意を呼びかけています。家での応急処置には限りがあるため、何をどれくらい口にしたかをメモして、すぐに受診先へ相談しましょう。

場面で読み解く、飼い主の手を舐める理由

飼い主の手を舐める理由としてよく挙げられるのは、甘え、要求、相手や自分を落ち着かせたい気持ちの3つです。どれに近いかは、舐める直前に何があったかを見るとつかみやすくなります。

舐める場面考えられる気持ち返し方のヒント
帰宅した直後再会のうれしさ、興奮荷物を置いて一呼吸おき、犬が落ち着いてから声をかける
なでている最中甘え、親しみのあいさつ軽く舐める程度なら、そのまま受け止めてかまわない
じっと見つめながら、手をつつくように舐めるごはん・散歩・遊びの要求舐めた直後に応じず、おすわりなど別の合図を出してから応える
大きな声を出した・叱ったあと相手を落ち着かせたい、緊張している声を落として距離をとり、犬が自分から離れられるようにする
料理や食事のあと手に残った食べ物のにおい犬に触る前に手を洗う。危険な食材を扱ったあとは特に
爪切り・ブラッシング・診察の前後不安や緊張をやわらげたい手を止めて休憩をはさみ、短い時間で区切る
来客や初めて会う人の手においの確認、緊張のあいさつ相手にかがみ込まずに待ってもらい、犬のペースで近づかせる
寝る前やくつろいでいるとき安心している、気持ちを静めているゆっくりなでるか、そのまま休ませる
場面と気持ちの組み合わせは一般的な目安です。同じ場面でも犬によって違うことがあります。

叱ったときに舐めてくるのは「反省」ではない

叱っている最中に手や顔を舐めてくると、謝っているように見えるかもしれません。獣医師の解説では、これは「敵意はない」と伝え、場の空気を落ち着かせようとするサインの一種と説明されています。

つまり、何が悪かったのかを理解したというより、緊張している状態に近いと考えられます。舐めてきたら、それ以上声を強めずに、いったん話を終わらせるほうが犬も落ち着きやすくなります。

帰宅直後の舐め方が激しいときは

帰ってきた瞬間だけ興奮して舐めるのは、よく見られる再会のあいさつです。一方で、留守中に吠え続ける、物を壊すといった様子もあるなら、ひとりの時間に不安を感じている可能性もあります。

帰宅時の落ち着かせ方は飼い主が帰宅すると犬が吠える・そわそわするときの接し方で、留守番中の不安については留守番が不安で吠える・暴れるときの安心ステップで詳しく紹介しています。

自分の前足を舐めるとき、毛づくろいとの境目

散歩から帰ったあとや寝る前に、前足を少し舐めて整えるのは、犬にとってふつうの身づくろいです。数分で終わり、皮膚や毛に変化がなければ、あまり心配はいりません。

気をつけたいのは、同じ場所を何度も舐める、夜中にも舐め続ける、呼んでもやめないといった舐め方です。動物病院の解説では、こうした状態が続くと「肢端舐性皮膚炎(したんていせいひふえん)」につながることがあるとされています。

肢端舐性皮膚炎は、手先や足先の毛が抜け、皮膚が厚く硬くなっていく状態です。進むと潰瘍ができたり、出血や化膿が起きたりして、治りにくくなることがあります。

しつこく舐める背景にあるもの

獣医師の解説で挙げられている原因は、大きく分けて体の問題と気持ちの問題です。体の問題には、アレルギーや細菌・真菌の感染によるかゆみ、関節炎やけがなどによる痛みが含まれます。

気持ちの面では、長い留守番や運動不足による退屈、寂しさ、環境の変化が引き金になることがあります。舐めると気がまぎれるため、それ自体が癖になってしまうこともあるそうです。

さらに、舐めるたびに飼い主が声をかけたり見たりすると、「舐めればかまってもらえる」と覚えてしまうケースもあると、行動診療の獣医師は説明しています。

受診の前にメモしておくと役立つこと

原因がかゆみなのか痛みなのか、それとも気持ちの問題なのかは、見た目だけでは判断できません。診察のときに伝えられるよう、数日分の様子を書き留めておくと話がスムーズです。

  • どの足を舐めているか(片足だけか、両足か)
  • 舐める時間帯(留守番中、夜、散歩のあとなど)
  • 1回あたりどれくらい続くか
  • 皮膚の色、毛の抜け方、においの変化(スマートフォンで写真を撮っておく)
  • 最近変わったこと(フード、引っ越し、家族の生活時間など)

舐め続けている足を家で隠そうとして、包帯をきつく巻いたり人用の薬を塗ったりするのは避けましょう。保護の方法も含めて、獣医師に相談してから決めると安心です。

舐めさせても大丈夫? 人の側で気をつけたいこと

健康な人が手を軽く舐められる程度なら、過度に怖がる必要はありません。ただ、犬の口の中には人に感染することのある菌がいるため、いくつか知っておきたい点があります。

口の中の菌と、傷口

厚生労働省のQ&Aによると、国内の犬の74〜82%が「カプノサイトファーガ・カニモルサス」という菌を口の中に持っています。かまれたりひっかかれたりしたときだけでなく、傷口を舐められて感染した例も報告されています。

重症化しやすいのは持病のある人とされていますが、健康な人でも発症した例があるそうです。手に切り傷やささくれがあるときは舐めさせないようにし、ふれあったあとは石けんで手を洗いましょう。

同じく犬の口にいるパスツレラ菌についても、高齢の方や持病のある方は注意したいと獣医師が解説しています。小さな子どもや高齢の家族がいる家庭では、顔や口元を舐めさせない習慣にしておくと安心です。

手に塗ったもの、触ったもの

人用のハンドクリームや日焼け止めには、エタノールや香料、精油など、犬の体に合わない成分が含まれていることがあります。塗った直後の手は舐めさせず、犬と遊ぶ前には洗い流しておくのが無難です。

人用の塗り薬も、舐めると成分を体に取り込むことになり、下痢などにつながることがあると動物病院は説明しています。薬を塗った場所は、乾くまで犬が届かないようにしておきましょう。

料理のあとも同じです。玉ねぎを刻んだ手や、ブドウ・チョコレートをつまんだ手には成分が残ることがあるので、先に手を洗ってから犬に触れる流れを家族で決めておくと迷いません。

しつこく舐めるときの、叱らない返し方

舐められるのが苦手な家族がいる、来客に迷惑をかけてしまうなど、減らしたい理由があることもあるでしょう。その場合も、大きな声で叱ったり、口をつかんだりするのはおすすめできません。

舐める行動の多くは「気づいてほしい」という合図なので、叱られることでかえって注目を得たと受け取る犬もいます。叱られた緊張から、さらに舐めてしまうこともあります。

舐め始めたら、手を引いて少しだけ離れる

舐めてきたら、何も言わずに手をそっと引き、立ち上がって5〜10秒ほど背中を向けます。犬が舐めるのをやめて落ち着いたら、向き直って「おすわり」と声をかけましょう。

座れたら、そこで「いい子」と穏やかにほめ、なでてあげます。舐めるより座るほうがかまってもらえる、と少しずつ覚えていけるようにするのがねらいです。

家族のうち1人だけが応じてしまうと、犬は混乱します。誰が対応しても同じ返し方になるよう、声かけの言葉もそろえておきましょう。

舐める代わりに口を使える時間をつくる

退屈が背景にありそうなら、口と頭を使う時間を日々の中に増やしてみてください。たとえば、かじっても壊れにくいおもちゃを渡す、フードの一部をタオルに包んで探させる、といった遊びがあります。

散歩の時間を少し延ばしたり、においをかぐ時間を多めにとったりするのも、気持ちの満足につながります。散歩のあとに甘えてくるときの過ごし方は犬が散歩後に急に甘えてくる理由も参考にしてください。

こうした工夫をしても舐める回数が増えていく、手や足以外も含めて体をしきりに舐めるようなら、かゆみや不安が隠れていないか、一度動物病院で相談してみましょう。行動の相談に応じている獣医師もいます。

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